台風のお話−その2−
平成10年9月13日
 
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4.台風の発生
 台風は、高い温度(約27度以上)の海水の上に沸き立つ水蒸気を燃料にして、それを上昇気流で高い空に持ち上げて水滴(雲)にするときに発生する熱(凝結熱(潜熱))で運転される空気の大きな渦巻きです。 自然界の巨大なエンジン=内燃機関と言えます。 水蒸気がガソリン、高い空に持ち上げるのがピストン、雲ができる瞬間が点火プラグのスパークにそれぞれあてはまります。  だから、水蒸気・上昇気流・雲の発生のどれが無くてもうまく動きません。

 また、エンジンを起動するためには燃料ガスの圧縮と点火という始動操作が必要なように、台風も海の温度や水蒸気だけでひとりでに発生する訳ではなく、なにかきっかけが必要です。 簡単に言うと、燃料=水蒸気は絶対必要で、そこにきっかけ」として上昇気流雲(=熱)のどちらかが用意できれば、最小限の準備はOKです。 あとは、この3つがそろった状態が順調に維持されれば、台風は次第に発達して行く、あるいは強さを持続することができるのです。 燃料パイプが詰まったり(水蒸気=燃料の供給停止)、オイル切れでピストンが停止(上昇気流の停止)したり、点火プラグが壊れれば(雲(=熱)の発生停止)エンストするのと同じです。

 実際、熱帯海上に発生した入道雲が何百個も集まった巨大なかたまり(クラウド・クラスター)がきっかけで台風に成長する場合(水蒸気+雲)と、熱帯海上で風が蛇行して反時計回り(=低気圧)の空気の渦巻きができたことがきっかけで、その低気圧の中心に上昇気流が発生したことがきっかけで台風になる場合(水蒸気+上昇気流)があることがわかっています。  気象衛星「ひまわり」の雲写真を見ていて、上図のような雲の塊がフィリピンの東(右側)にあれば、そのうちどれかが台風になって日本にやってくるかも知れません(写真は米国気象衛星)。

5.台風のしくみ
 台風は、平均的なものでは厚さが12km前後、直径が1000km前後。 この模型をつくろうとする場合、厚さを1mmとすると直径10cm。 ちょうどCDと同じ!!ぐらいの、ものすごく薄い円盤なのです。  よく解説書とか地学の教科書に台風の断面図が書いてありますが、あのぐらいの厚みで正確な縮尺で絵を描こうと思うと、直径は1mを軽く超えてしまうことになります。  驚かれましたか?  あのような断面図は、あくまで説明用のもの。  間違っても、「バウムクーヘン」のような形、などとは思わないでほしいのです。

 平均的な、それも最盛期にある台風では、

(1)中心に直径数十キロから時には百キロもの「眼」

これは、中心付近では渦を巻く風が速すぎて、風(=空気)は自分の遠心力のためにそれ以上中心に近づけない
(回り始めたルーレットの玉が中心に落ちないのと同じ)ためにできます。
(2)眼の周りの幅(太さ)数十キロから百数十キロのドーナツ状の入道雲(積乱雲)の塊
これがエンジン。  たっぷり水蒸気を含んだ空気が秒速10メートル以上もの上昇気流に乗って上に昇り、冷やされてどんどん雲ができ、そのとき発生した熱で温度が上がり軽くなった空気はさらに強く上に昇ろうとし・・・
この連鎖で台風は発達してゆきます。
(3)その外側、渦巻き状に中心に巻き込む入道雲の帯

という水平方向の構造を持っています。  「眼」は中心付近の渦巻き風が強いからできるものなので、はっきりした「眼」のある台風は渦巻きが強い=風が強い=勢力が強い台風、ということになります。
 
 

6.実験室で台風を作る!
 世の中には賢い人がいるようで、こんな複雑な台風を実験室で作った人がいます。  軸を中心に回転する上下・側面が閉じた(枠あり底あり蓋あり)浅〜い円筒形の水槽の中にたばこ(線香でもいい)の煙を少し入れ、上から赤外線(熱線)で照らすのだそう。 そうすると、赤外線(熱線)は空気を素通りするものの、煙の粒に当たると、電気ヒータに手をかざすと暖まるように、煙の粒を暖めるのです。 で、その暖められた煙の粒は周りの空気を暖め、軽くなった空気は上に昇って行く・・・。 ちょうど、台風の雲のなかで水蒸気が雲粒になって熱を出すのと似た状況が作れるのです! (写真は魏、王、文字(1987)より。左上にあるのは日本列島の模型)。

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